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第13話  天草とらふぐの稚魚受入から出荷まで -稚魚編-

2014.9.17 カテゴリー:とらふぐのあれこれ, ふぐの種類と生態

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。



とらふぐのシーズンは、秋のお彼岸から春のお彼岸まで(秋分の日前後3日~春分の日前後3日)と言われています。つまり、9月20~26日~3月18~24日までの時期を、とらふぐのシーズンと言われているのです。これは、成長した天然のとらふぐが産卵のために日本沿岸に近づく時期であり、また、〝鍋の王様〟てっちりと言われるように、温まる料理が恋しくなる、日本のふぐ文化と言えるでしょう。しかし養殖とらふぐは、技術の進歩(飼育方法の改善や餌の品質向上、動物用医薬品の開発)など、通年美味しいとらふぐを提供できるようになりました。とらふぐ=冬、という考え方は、天然とらふぐにまつわる様です。しかし、養殖とらふぐの雄は、秋から冬にかけて白子が成長するため、やはり、冬が旬と言えるでしょう。

それでは、天草海産の稚魚受入から出荷までの流れをご紹介したいと思います。

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稚魚は、4月から5月にかけて受入します。稚魚の体調は約7cm、体重は約10gです。稚魚とは言えども、お腹を膨らませる姿や形、どれをとっても立派なとらふぐちゃんです。4月から6月は、朝方から夕暮れまで5回以上餌やりをします。7月から8月は3回、9月から10月は2回、11月から3月までは、水温に合わせて給餌しない日もあります。とらふぐの状態によって、EP(配合飼料)やMP(鰺や小女子、アミなどを、造粒機(餌を攪拌し、ペレット状に作りだす)を給餌し、健康第一に養殖しています。

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とらふぐを養殖する上で一番大変なことは、歯切りです。歯切りとは、専用のニッパで丁寧にとらふぐの上下の歯を切る作業のことです。歯切りは、5月から7月の間に4~5回行い、春先の3月に1回行います。天草海産は、22~24万匹のとらふぐを養殖しているので、年間の1/4、約90日は歯切りの作業を行っています。歯切りは、眼も疲れますが、何と言っても手作業なので腱鞘炎になることがよくあります。私も4年前に箸も使えない状態になったので、腱鞘炎の手術をしました。とても痛かったです(泣)。とらふぐ養殖=腱鞘炎とまでは言いませんが、〝職業病〟というかっこいい病名をお医者さんから命名されました。

とらふぐの選別作業の様子です。大、中、小にサイズ分けしています。

また、とらふぐの成長に合わせて、分養(間引き作業)を行います。分養の時期は決まっていませんが、飼育密度を調整することにより、とらふぐのストレスを軽減します。天然とらふぐは、奇麗な砂地で悠々と生活するのに対し、養殖とらふぐは、飼育密度の高い水槽で成長していきます。人間にたとえれば、6畳の部屋に5人や10人で生活すれば、ストレスがたまるのと同じです。子供の成長に合わせて、1人部屋を与えたり、リフォームすることと同じ作業なのです。とらふぐも人間と同じように、ストレスを感じれば病気になることもしばしばです。天草とらふぐは、より自然界に近いストレスの少ない養殖を心がけています。

 

第13話は、ここまで。第14話をお楽しみに。

天草海産 3代目 〝福の宅配人〟太田雄三