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第12話  とらふぐの毒(テトロドトキシン)について シリーズその③

2014.9.14 カテゴリー:とらふぐのあれこれ, ふぐの歴史について, ふぐの種類と生態

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。

水槽を泳ぐ〝天草とらふぐ〟の水中写真です。



ふぐ毒(テトロドトキシン)については、第3話と第11話で解説してきました。

沢山の方から、ふぐ毒(テトロドトキシン)について、お問い合わせを頂いていますので、最近の動向も踏まえて解説していきます。圧倒的に多い質問です。

・養殖のとらふぐには、ふぐ毒(テトロドトキシン)はありますか?

・ふぐ中毒になればどの様な症状になるのですか?

養殖とらふぐは、配合飼料のEP(エクストルーデッドペレット)や食用の鰺や小女子、アミなどを、造粒機(餌を攪拌し、ペレット状に作りだす機械)で作る、MP(モイストペレット)が一般的です。

初めに陸上とらふぐは、陸上に専用のプールを設け、海水をポンプで汲み上げて養殖を行っているため、餌となる他の食物を口にすることがほとんどありません。

次に海面とらふぐは、筏(いかだ)に網を張り、その中でとらふぐを養殖しています。網の間から入る他の侵入物がゼロではないため、陸上とらふぐより餌となる他の食物を口にする可能性は高くなります。

最後に天然とらふぐは、自然界の海で生活しているため、沢山の種類の餌を食べています。11話でも触れたように、ツムギハゼやヒョウモンダコ、また、数種類の貝類、棘皮動物、甲殻類からもふぐ毒(テトロドトキシン)が検出されており、ふぐ毒(テトロドトキシン)を食べる可能性は、高くなります。

最近の研究で、養殖とらふぐのふぐ毒(テトロドトキシン)について、解明されてきました。

以前は、とらふぐ=ふぐ毒(テトロドトキシン)という考え方が一般的でした。しかし、11話でも触れましたが、谷博士の研究で、①種類差、②臓器差、③個体差、④季節差、⑤地域差でふぐ毒(テトロドトキシン)の強さが異なることは紹介しました。

最近の研究で分かったことは、ふぐ毒(テトロドトキシン)は、食物連鎖によって蓄積されているということです。これは、とらふぐ養殖業者にとって朗報であり、天然のとらふぐと養殖とらふぐのふぐ毒(テトロドトキシン)の強さが異なることになります。いわゆる、内因性(ふぐ毒はふぐ自身が作りだすもの)と考えられてきましたが、外因性(餌を食べて蓄積する)のものであり、食物連鎖に由来することが明らかになりました。

結果、陸上とらふぐ<海面とらふぐ<天然とらふぐの順で毒性が強いと考えられます。

次にふぐ中毒について考察します。

症状としては、4段階に分けられます。

第1度【中毒の初徴】

口唇部と舌端部の軽いしびれで、摂取後20分~5時間以内です。

第2度【不完全運動麻痺】

運動麻痺はふぐ中毒で最も特異とする症状であり、知覚麻痺や言語障害も著名になります。

第3度【完全運動麻痺】

血圧降下、呼吸困難、チアノーゼ(爪や唇が青紫色になる)が現れ、嚥下が出来なくなります。

第4度【意識消失】

意識不明になり、呼吸が停止し、死に至ります。

最後に、ふぐ毒(テトロドトキシン)の特徴について解説します。

①純粋なふぐ毒(テトロドトキシン)は、無色、無味、無臭である。

②水や水に溶けない有機化合物には溶けないが、微酸性の水には溶ける。

③微酸性液中では安定だが、強酸性液中では容易に分解する。アルカリ性液中でも分解し、毒性を失う。

④湿熱及び乾熱に抵抗し、毒性を失わない。

⑤紫外線、太陽光線の照射には抵抗性が大きい。

⑥消化酵素に分解されない。

⑦免疫性が全くない。

⑧動物膜を浸透しやすい。

ふぐ毒(テトロドトキシン)は、本当に怖いですね。ふぐ毒について正確な情報を知っていただき、これからも天草海産は、安心・安全なとらふぐをお届けします。

第12話は、ここまで。第13話をお楽しみに。

天草海産 3代目 〝福の宅配人〟太田雄三